縮小ニッポンの衝撃
「縮小ニッポンの衝撃 (NHKスペシャル取材班 2017年)」読みました。
人口減少に伴う問題はいろいろな書籍等で指摘されています。
本書では、地方、都市部問わず、人口減少で生じている課題やそれに対する自治体などの対応について、レポートされています。
①縮小社会の未来が住民組織に託された
まずは、地方の状況について
「地域運営組織」というものをご存知でしょうか。
地方では、既に人口が減少しており、今後さらに減少のスピードは速まることが考えられます。そうなると、将来、人員や税収の不足で行政も今のようなサービスを提供できなくなることが危惧されています。
そこで、行政の手が届かなくなった「隙間」のサービスについて、地域組織に委譲し、地域組織が実施する制度で、全国に先駆けて、島根県雲南市がこの制度を始めました。
市からは毎年約800万円が支給され、その使い道は各組織に委ねられています。
住民組織は、将来の地域の姿を自ら描き、限られた財源の中で何を優先するかを考えて、地域に必要な事業を企画・実行していきます。
こう書くと、行政が住民に丸投げし安価で任せる仕組みでないかと思いますが、交付額は年々増加しているとのこと。
それでも、この地域運営組織を続ける理由として、雲南市の職員は「一人ひとりが力を発揮しなければ、この社会が成り立たなくなってきている。この現状をしっかりと受け止め、将来を見通したときに、必要な先行投資だと考えている」と言っています。
将来を見据え、今のうちから住民組織を育てていくということでしょうか。
②集落を縮める
人口減少に苦しむ集落の支援をしている島根大学の作野教授は、予想以上に進む人口減少を前に今何をするべきか。という問いに対し、「維持管理が難しい場所を住民自らが選び、集約するべきだ」と答えています。
つまり、引き続き集落で保持・管理するエリアと、もう管理が難しいので、手放してしますエリアの線引きをするということです。
コンパクトシティーの「農村版」という発想でしょうか。
集落を縮めることになるので、抵抗は大きいかもしれませんが、そうせざるをえない地区が増えていくと思います。
うまくいくためには、住民をまとめ、合意を得ながら進めていく人がいるかどうかが大きな問題だと思います。
③縮小を直視する
金沢大学の林直樹准教授は、高齢化が著しい過疎地では、住民の生活と共同化を守り、地域環境の持続性を高めるため、一定規模の拠点集落にまとまって移住する、集団移転を提唱されています。
また、島根大学の作野教授も、村の最後を看取る「むらおさめ」も視野に入れた議論の必要性を提案されています。
縮小を直視し、「何を諦めるのか」を判断する必要性が地方に求められます。
④始まった“東京”の縮小
都市部でも人口減少が現実のものとなっています。
2015年の国勢調査では、立川市や八王子市、さらには、横浜市、さいたま市、千葉市、相模原市の13の区で、数百人から数千人単位で大きく減少しています。
しかも、2040年には、東京圏のほぼすべての市区町村で人口減少に転じると試算されています。
東京圏の大きな問題として、これまで地方からの人口流入で人口が増加もしくは維持していましたが、地方の人口減少で流入人口が減るとともに、これまで流入した人が高齢化していきます。
そうなると、社会保障費の増大と税収の減少という「二重苦」となります。
本書では、先行事例として横須賀市で起こっている非常に厳しい現状が紹介されています。
⑤東京・死の一極集中
本書では、
- 東京をはじめとした大都市圏では医療や介護を必要とする高齢者の急増は避けられない。
- そうなると、介護施設や医療機関で最期を迎えるのはこれまで以上に難しくなる。
- 自宅で放置され、人知れず亡くなる人が急増するかもしれない。
- 賃貸住宅に住んでいる単身高齢者の中には家賃を払えなくなり退去を迫られる人もあるだろう。
- 自宅でもなく、病院でもない、自分の死に場所さえ見つけられない「死に場所難民」が出てくる。
と述べています。
地方も大変ですが、東京はさらに大変な時代に突入します。
特に、2025年には5人に1人が75歳以上という超高齢化社会に突入します。
社会保障費が増大する一方、税収は減少。国家財政が破綻する危機に瀕するかもしれません。
あと8年。どうしたらいいのか考えさせる一冊です。