要点はココ! プチ活字中毒者の乱読日記

図書館の本を読み尽くしているプチ活字中毒者です。読むジャンルは偏ってますが、読書する時間のない人に、本の要点を紹介します。

人口減少時代の土地問題

「人口減少時代の土地問題」吉原祥子 著 2017年 中公新書 を読みました。

少し紹介します。

人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書)

 

 

 1 増加する不在地主

最初に、数字を紹介します。

  • 国土の約4割を占める私有林については、不在地主保有する面積が少なくとも24%
  • そのうちの約4割は当該都道府県外に居住する者が保有
  • 世帯の所有する空き地は、宅地などの面積の8.6%を占め、2003年の1.4倍。増加分の大半は相続・贈与によるもの(本書より)

不在地主がなぜ増えているのか。
それは、人口減少に伴い土地需要が減り、土地が管理コストのかかる「負の資産」になり、わざわざ手間と費用をかけてまで相続登記をしなくなったためです。

そうなると、人口は今後さらに減少することから、ますます不在地主は増えていくでしょうね。

2 不動産登記制度の再考

そのため、現在の不動産登記制度の再考案として「亡くなった被相続人名義のままの登記記録について、登記官が職権が法定相続人を特定し、共有名義に書き換えられるようにすること」という意見を紹介しています。

3 国境を超える「所有者不明化」
  • 土地情報基盤の検討にあたって見落としてはならないのが、人の移動や投資のグローバル化
  • 法律では、日本国内に住所を持たない非居住者による投資目的の不動産取得について、事後報告を義務づけている。
  • しかし、届出件数などの情報は公表されていないため、実際に行われた売買に対してどれだけ届出が出されているのか不明
  • 加えて、非居住者が日本の不動産をほかの非居住者から取得した場合(つまり転売)した場合は報告義務の対象外
  • 国土交通省は2013年8月に「不動産市場における国際展開戦略」を公表し、海外投資家による投資を呼び込み、不動産市場の活性化を推し進めている。
  • こうした課題をそのままにして、土地所有のグローバル化を進めることは、国境を越えて「所有者不明化」問題が広がることにつながりかねない。(本書より)

後ほど紹介しますが、国土交通省も土地の所有者不明土地の対策について検討しています。

4 どうすればいいのか
  • 相続未登記によって、将来、権利関係が難しくなることや、その影響が地域の土地利用や災害復旧などにも影響するおそれがあることなど、日頃から学べる機会を設けることが必要
  • また、次に相続人となる40歳代、50歳代を対象とした啓発の機会も重要

(本書より)

対策について述べられていますが、「教育」しか述べられていなく少しもの足りなさを感じます。


5 次世代に土地を適切に引き継ぐために
  • 人口減少時代に適した土地制度の整備が必要(本書より)

まさしくそのとおりだと思います。では著者が述べる「人口減少時代に適した土地制度」とは具体的にどのようなものなのか。そのあたりの言及がほしかったですね。

6 所有者不明土地の公共的目的の利用を可能とする新制度(案)<国土交通省

国土交通省は、所有者不明土地の利用の円滑化に向けた法案を、次期通常国会へ提出する予定とのこと。
法案の内容は、反対する所有者がおらず、建築物がなく、現に利用されていない所有者不明土地を対象に、2つの措置を講じることとしています。

  • 一つ目は、道路などの公共事業においては、所有権を取得する必要があるため、収用手続の特例を設けます。
  • 具体的には、補償額を決定する場合、収用委員会に代わり、都道府県知事が審理手続を省略した上で、裁定するなど、手続の合理化を行えることとします。
  • 二つ目は、利用権の設定を可能とする新たな制度を創設します。
  • 具体的には、広場、公園の整備を民間が行うような場合について、都道府県知事が公益性等を確認し、公告を行った上で、一定期間の利用権を設定できることとします。
  • 期限の上限は、最低5年間としています。

 

さらに、12月29日の日経新聞によると、政府は

  • 相続登記の義務化
  • 土地所有権の放棄の可否などを

協議し、具体策を検討するとのこと。

 

これから大きく動きそうですね。