裁量労働制について社説を読んで考えてみました。
国会で盛んに議論となっています、裁量労働制について、全国新聞社5社の社説の要点を紹介します。
- 1 裁量労働拡大 法案から分離し出直せ (朝日新聞 2018年2月23日)
- 2 裁量労働制調査 柔軟な働き方を冷静に論じよ(読売新聞 2018年02月22日)
- 3 裁量労働制の不適切データ 3年も使い続けた責任は (毎日新聞 2018年2月21日)
- 4 裁量労働制をめぐる本質的論議を深めよ (日経新聞 2018年2月23日)
- 5 裁量労働制 実施延期で議論を深めよ (産経新聞 2018年2月22日)
1 裁量労働拡大 法案から分離し出直せ (朝日新聞 2018年2月23日)
- 急がねばならないのは、裁量労働制の対象拡大ではなく、残業の上限規制など働き過ぎの防止策
- 裁量労働制の拡大については、「働き方改革」法案から切り離し、現場の実態を調べ、国民が納得できる制度を練り上げる。政府はそう決断するべき。
- 裁量労働拡大の実施や、専門職で年収の高い人を労働時間規制から外す高度プロフェッショナル制度の創設を予定より1年遅らせ、20年4月にすることを検討し始めた。
- 典型的な問題のすりかえであり、論外だ。
- 労働政策審議会での議論の過程がそもそも異例
- 労働側が長時間労働への恐れが払拭(ふっしょく)できないと最後まで反対したのを押し切り、「おおむね妥当」と結論を出した。
- 裁量労働をめぐっては、対象外の人に適用して残業代を支払わない例など、今もさまざまな問題が指摘されている。
- 現状に向き合うことが出発点だ。なし崩しの拡大は許されない。
2 裁量労働制調査 柔軟な働き方を冷静に論じよ(読売新聞 2018年02月22日)
- 裁量労働制は、あらかじめ決められた時間を働いたとみなす制度だ。専門性などを有するホワイトカラーが主体的に時間を決めることが可能となる。
- 本来、一般労働者と比較した労働時間の長短のみで制度の是非を判断すべきものではない。
- みなし労働時間は、本人の同意が必要だ。使用者には、勤務状況を把握して、健康確保措置を講じることが義務づけられている。
- 野党が裁量労働制に「定額働かせ放題」とレッテルを貼り、批判するのは一面的に過ぎる。
- 経営側による制度の悪用を指摘する声もある。制度の趣旨を踏まえた適切な運用や健康確保のあり方について、国会で議論を深めることが大切だ。
- 関連法案には、時間外労働の上限規制や、「同一労働同一賃金」の推進を盛り込む方針で、生活の多様化に合わせて柔軟な働き方につなげる狙いがある。
- 野党が極論に終始し、本質的な議論が少なかった安全保障法制の二の舞いにしてはならない。
3 裁量労働制の不適切データ 3年も使い続けた責任は (毎日新聞 2018年2月21日)
- あらかじめ定めた時間を働いたとみなして賃金を決めるのが裁量労働制だ。
- 専門的な職種などで働き方が労働者の裁量に委ねられる半面、長時間労働による過労死が相次ぐ。対象外の業務に適用して残業代を払わないケースも摘発されている。
- 安倍政権は今国会の最重要法案と位置づけ、長時間労働の規制強化などと一括して法案に盛り込もうとしている。
- 裁量労働制の拡大については少なくとも法案から切り離し、別に議論するのが筋だ。
4 裁量労働制をめぐる本質的論議を深めよ (日経新聞 2018年2月23日)
- 裁量労働制の拡大には、ホワイトカラーの生産性向上を促す意義がある。
- 今国会に政府が提出予定の働き方改革関連法案には、裁量労働制の拡大のほか、労働時間ではなく成果をもとに賃金を払う「脱時間給」制度の創設も盛り込まれる。
- いずれも働いた時間に成果が比例しない仕事が増えてきた時代の変化に合わせ、働き手の生産性向上を後押しする狙いがある。
- 野党も、働き方改革の目的などをめぐる本質的な議論を置き去りにしないようにしてもらいたい。
- 健康確保措置として、裁量労働制では労働時間の上限設定や、終業から始業までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」導入などのどれかを企業に義務づける。こうした対策を含め建設的な論議をたたかわせてほしい。
- 裁量労働制の拡大や脱時間給の新設は15年4月の最初の法案提出から棚ざらしにされている。これ以上、先送りは許されない。
5 裁量労働制 実施延期で議論を深めよ (産経新聞 2018年2月22日)
- 裁量制には働く人が柔軟に自らの労働時間を決められるなど、多様な働き方を促す効果がある。
- これは労働生産性の向上に資するものにもなる。
- 適用拡大は以前から産業界が求めていたものだが、適用対象となる労働者の健康管理などで課題も残る。
- 政府は答弁の撤回に伴い、裁量制拡大の施行時期を来年4月予定から1年延期する方針だ。
- この時間的猶予を生かし、対象者の健康管理などで企業側に厳格な規定をいかに設けるかなど、適用拡大する上で欠かせない議論をもっと深めるべき。
- 働き方改革法案には、残業時間に上限を設ける労基法改正案も盛り込まれている。労働者の心身の健康を損なう恐れがある長時間労働の是正も急務である。
(以上、各新聞社の社説より)
裁量労働制のメリットとしては、
「働く人が柔軟に自らの労働時間を決められる」
「多様な働き方を促す効果がある」と言われています。
一方で、
「長時間労働への恐れが払拭できない」
「対象外の人に適用して残業代が支払われない例がある」とのデメリットも言われています。
既に、裁量労働制の業務としては、専門業務型裁量労働制として、19の業務が対象となっています。さらに、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う業務も企画業務型裁量労働制として対象となっています。(厚生労働省ホームページより)
これ以上どんな業務を対象としてするのでしょうか?
与党は裁量制拡大を含む働き方改革関連法案を今国会に提出するつもりのようです。
しかしながら、まだ、議論が足りない気がします。(調査も不備でしたし。)
各新聞社によって裁量労働制に対する意見は異なっていますが、「もっと議論を」という点は共通しています。
「働き方」は、ほとんどの国民が関係することなので、施行時期として検討されている20年4月までの間の議論を注視する必要があります。
<3月1日更新>
裁量労働制の対象拡大について、関連法案から削除され、議論し直すこととなりましたね。
厚労省のデーターに、これだけたくさんの異常値が見つかるなかでは当然だと思います。