要点はココ! プチ活字中毒者の乱読日記

図書館の本を読み尽くしているプチ活字中毒者です。読むジャンルは偏ってますが、読書する時間のない人に、本の要点を紹介します。

春闘の社説を読み比べて思ったこと。

このところのニュースは森友問題一色ですが、私としては生活への影響を考えると「春闘」の回答に関心がありました。

 

3月18日で全国新聞各社の社説が出揃ったので、その要点を紹介します。

 

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春闘 賃上げ、さらに進めよ。朝日新聞
<2018年3月18日>

 

  1. 昨年をやや上回る傾向にあるが、安倍政権が示した「3%以上」に届かない水準
  2. より力強い賃上げの流れが必要
  3. ベースアップ分については、明確に分かる回答の平均では0・77%で、足元の消費者物価上昇率を下回る。
  4. 企業の収益は依然高い水準にあり、一方で働き手への配分割合は歴史的にみても低いまま。失業率は下がり、人手不足感も強い。賃上げの条件はかつてなく整っている。
  5. 春闘では、相場の形成役を担うトヨタ自動車の回答が遅れ、さらに「3・3%の賃上げ」としながらベアの具体額を公表しなかった。依然圧倒的な収益力を誇る企業の行動として、疑問が残る。
  6. デフレ下で弱まった働き手の立場を回復させるためにも、春闘の力の発揮が一段と求められる。牽引(けんいん)役である連合の責務は重い。
  7. 賃上げをさらに進め、中小企業や非正社員の賃金水準の底上げにつなげることが必要

 

 

春闘賃上げ回答 中小企業にどう裾野広げるか。読売新聞
<2018年3月16日> 

 

  1. デフレ脱却を確かなものにするには力不足が否めない。
  2. 生産の担い手であり、消費の中核でもある労働者の処遇改善を一段と進めてほしい。
  3. ベア・定昇だけで3%を達成した企業は少ない。消費喚起の効果は限定的
  4. 賃上げが消費を促し、企業業績を押し上げる好循環の実現には、労働者の7割を占める中小企業の労使交渉の行方がカギを握る。
  5. 下請けの賃上げ原資を確保するため、大企業が取引条件で譲歩するのは一案だ。中小企業のベア実現は人手不足対策にもなろう。
  6. 非正規労働者については、正社員化と合わせて、手当の引き上げにも取り組んでほしい。
  7. 春闘では、政府の働き方改革を先取りして、長時間労働の是正で合意した企業が多い。
  8. サービス残業など不当な労働慣行は見直さねばならない。一方、残業の減少によって、従業員の収入が落ち込む懸念もある。
  9. 政府の残業規制が実現すれば、労働者の手取り額が3%近く減るとする調査結果がある。
  10. 企業は「稼ぐ力」を高め、実質的な賃上げを堅持する方策を検討すべきではないか。
  11. 継続的な賃上げには生産性向上が欠かせない。業務を効率化する情報技術(IT)投資や高度人材の育成が急務
  12. 政府は、企業の「人への投資」を促す税制面の支援を強化しなければならない。

 

 

 「3%賃上げ」目標の春闘 中小こそ大幅ベア実施を 毎日新聞
<2018年3月18日> 

 

  1.  安倍晋三首相が求めた3%賃上げに届かない企業は多い。
  2. かつてない好業績の企業が相次ぐ中で、賃上げの勢いは思ったほどないと言わざるを得ない。 
  3. 18年3月期に上場企業は2期連続で最高益となる見通しだ。内部留保も過去最高の水準になっている。それを考えれば、もっと大胆に賃上げをしてもいいのではないか。 
  4. 経営側は国際経済の先行きが不透明な上、人工知能(AI)などの普及に合わせて設備投資を増やしたいため、賃上げに消極的とされる。
  5.  ベアより安定雇用を優先する傾向も今回の春闘では見られた。60歳以上の社員の処遇改善や定年延長を要求する組合も多い。 
  6. 政府の働き方改革で、残業時間制限が実施されると、大企業の経営者は不足する労働力を補う方策に迫られ、下請け企業に負担が押しつけられるのではとの懸念がある。 
  7. これから本格化する中小企業の労使交渉では労働条件も含めた処遇改善を一層進めなければならない。 

 

長期雇用が阻む積極的なベア 。日経新聞<2018年3月15日>

  1. 総じて力強さを欠く賃上げだ。
  2. 毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)では勢いのあった14~15年を下回る企業が目立った。
  3. 何が積極的な賃上げを阻んでいるのか。根にあるものを見定めたい。
  4. 上場企業は18年3月期に2期連続で最高益となる見通しだ。手元資金も過去最高水準にある。本来なら、思い切った賃上げが広がっておかしくない。
  5. にもかかわらず、企業が積極的な賃上げを控えるのは、雇用を維持するコストが大きいためだ。
  6. 長期雇用の慣行のもとでは将来にわたっての人件費負担も織り込まなければならない。ベアは退職金や社会保険料負担の増加にもつながるため、経営者としては慎重にならざるを得ない面がある。
  7. 労働組合も、雇用維持を優先するので賃上げ要求は控えめだ。日本的な労使協調が、賃金上昇を抑えている構造的要因といえる。
  8. 労使の話し合いで一律的に小幅な賃上げをするだけでは「経済の好循環」をつくるのは難しい。
  9. 成果を出す人材にはそれに見合った報酬を払う仕組みを、企業は徹底する必要がある。生産性を高めて賃金を上げようという意識を働き手に広げなくてはならない。
  10. 政策の後押しも求められる。能力開発の強化など「人への投資」を経営者に促すうえで、企業統治改革は重要だ。・
  11. 優秀な外部人材の受け入れを増やせば生産性向上への社員の意識を高めやすい。柔軟な労働市場の整備も急ぐべきだ。

 

 

春闘集中回答 働く意欲高める賃上げに。産経新聞
<2018年3月16日>

  1. 賃上げの中身をみると物足りなさが残る。
  2. 手取り収入の増加を実感しやすいベアは、期待されたほど伸びなかった。
  3. デフレ脱却を確かなものにするには、賃上げの流れをこれからも継続することが重要
  4. 電機大手のベアは1500円で妥結した。昨年実績を500円上回るが、3年前に比べると半分の水準
  5. トヨタ自動車はベアの具体額を公表しなかった。期間従業員ら正社員以外を含む全組合員平均の昇給率は3・3%というが、同社は春闘相場の形成に大きな影響を与える存在だ。官民で賃上げに取り組んでいるだけに、丁寧な説明を心がけてほしい。
  6. 大手各社がベアに慎重な姿勢をみせたのは、国際競争が激化する中で人件費の上昇につながることを恐れたためだ。
  7. しかし、人口減少を背景に今後は深刻な労働力不足が見込まれており、優秀な人材の確保は大きな経営課題
  8. 人材投資という観点からも継続的な賃上げが必要
  9. 賃上げを通じて個人消費を喚起し、脱デフレにつなげるには、働く人の約7割を占める中小企業への波及が欠かせない。
  10. 働く人の意欲を高めるため、労働時間の短縮や休日増などを含めた処遇改善も労使で着実に進めてほしい。

 

 

 

「より力強い賃上げの流れが必要」(朝日新聞
「力不足が否めない」(読売新聞)
「賃上げの勢いは思ったほどないと言わざるを得ない」(毎日新聞
「総じて力強さを欠く賃上げだ」(日経新聞
「物足りなさが残る」(産経新聞

と、どの新聞社も春闘の結果について、マイナス評価ですね。

 

「国際経済の先行き不透明」(毎日新聞)、
「長期雇用の慣行のもとでは、将来にわたっての人件費増を織り込まなければならず、経営者としては慎重にならざるを得ない」(日経新聞
といったところが理由として指摘されています。

 

アメリカや中国の状況をみてると貿易戦争が起こりそうな雰囲気ですし、長期雇用もメリットがあるのでなくならないでしょうね。

 

一方で、今後ますます深刻化する人手不足により、労働者の確保のため賃金アップが避けられないという企業も多くなるでしょう。

 これから中小企業の労使交渉が本格化しますが、どんな結果になるでしょう。

 

 

ところで、今回の春闘の回答についての評価は、各新聞社とも同じ評価でしたが、一方で、春闘そのものについての考えは、朝日新聞日経新聞では異なっています。

 

朝日新聞は「働き手の立場を回復させるためにも、春闘の力の発揮が一段と求められる。」と、さらに必要だという考えですし、日経新聞は「労使の話し合いで一律的に小幅な賃上げをするだけでは「経済の好循環」をつくるのは難しい。」と、春闘について、やや否定的な意見です。


労働組合の組織率が低下している現状を見ていると、日経新聞のほうが納得できる意見です。

 

組合に頼ることなく、企業が「給料を上げても雇用したい」と思われるよう、それぞれが生産性を高めることが必要ですね。