要点はココ! プチ活字中毒者の乱読日記

図書館の本を読み尽くしているプチ活字中毒者です。読むジャンルは偏ってますが、読書する時間のない人に、本の要点を紹介します。

2040年の社会保障はどうなっているでしょう。

高齢者人口がピークとなる2040年の社会保障推計について、政府が公表しました。

 

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<社会保障給付費推計の概要>

  • 高齢者数がピークに近づく2040年度には、社会保障給付費が18年度の約121兆円から約190兆円に上がる。
  • GDPに占める割合は、18年度の21.5%から24%に上昇
  • 医療福祉分野で必要な就業者数は、18年度の823万人が40年度には242万人増の1065万人と推計

 

 

 

各新聞社が5/22~25日にかけて社説を掲載していますので、要点を紹介します。

 

 

1 朝日新聞 「社会保障推計 給付と負担の再構築を」(5月23日)

  • 65歳以上の人口は25年度以降も増え、現役世代は減る。消費税率を10%まで引き上げれば制度はもう安心、という状況ではない。
  • だが、来年の統一地方選、参院選をにらみ、与党内には負担増を口にするのを避ける空気が広がる。近く決定する骨太の方針にも、新たな財政再建目標のもとで社会保障費をどの程度まで抑えるのか、具体的な数値目標は書き込まない方向
  • 議論を先送りする口実に、今回の推計が使われるようなことがあってはならない。
  • 税金や保険料の負担を増やすのか、それとも給付の伸びをもっと抑える方策を考えるのか。検討が必要
  • 医療や介護の改革では、原則1割になっている75歳以上の医療費介護保険の利用者負担を2割に引き上げる、軽度の医療や要介護度の軽い人向けのサービスを保険の対象から外すなどの改革が、すでに政府の審議会などで取りざたされている。
  • 実際にどこまで踏み込むのか。それによって税金や保険料の負担はどう変わるのか。負担と給付の全体像、選択肢を分かりやすく示すことが不可欠
  • 推計は、医療・介護現場の深刻な担い手不足も浮き彫りにした。人材確保のための処遇改善にも財源が必要。制度を支える働き手を増やすため、高齢者や女性が働きやすい環境を整える方策も進めねばならない。
  • 合意の形成には時間がかかる。社会保障の議論からこれ以上逃げている余裕はない。

 

2 読売新聞 「社会保障費推計 2040年見据えた議論急げ」(5月23日)

  • 40年には、団塊ジュニア世代が老後を迎える。高齢者人口は4000万人近くにまで増え、総人口の3分の1を超える。現役世代の減少は加速
  • 推計によると、名目の給付費は今の1・6倍の190兆円になるが、対GDP比でみると1・1倍だ。際限なく膨張して制度が崩壊する、といった一般的なイメージとは異なるのではないか。
  • 国民には、漠然とした将来不安が広がっている。それが、消費を低迷させ、脱デフレを困難にしてきた。現実に即した冷静な議論で不安解消につなげたい。
  • 医療と介護の連携を強化し、入院中心の医療から在宅中心へと転換する。軽度者向けの介護保険サービスは自治体事業に移す。予防重視の施策を拡充し、健康寿命を延ばす。医療・介護の効率化を徹底して推進せねばならない。
  • 膨らむ費用を誰がどう負担するのか。減少する現役世代にばかり頼っていては、早晩行き詰まる。高齢者も含めた全世代が、経済力に応じて負担する仕組みに改める必要がある。
  • 働き方改革を進め、女性や高齢者の労働参加を促すことも大切
  • 負担増の議論は避けて通れない。消費税率10%を実現する環境を整える。その上で、さらなる税率アップを検討すべきだろう。
  • 40年以降を見据えた最大の課題は、いかに人口減を食い止めるかだ。出生率向上を速やかに実現できるかどうかで、日本の将来像は大きく変わる。少子化対策のさらなる拡充が急務

 

3 毎日新聞 「2040年度の社会保障費試算 議論封印の遅れ取り戻せ」(5月22日)

  • どうやって70兆円もの財源を作り出せるのか。安倍政権は早急に中長期的な対策を講じなければならない。
  • 安倍政権はアベノミクスによる好景気で税収が増えることを目指すというばかりで、国民の負担増や支出の抑制策については本格的な議論をしてこなかった。
  • 旧民主党政権時の12年に3党合意で税と社会保障の一体改革が決まったが、3党合意からの6年間に高齢化は進み、社会保障費は9兆円近く増えている。
  • 一方、現役世代の人口は減り、働き手不足も深刻だ。厚生労働省によると介護職員は25年までに新たに約54・7万人確保する必要があるという。財源も人材確保もこれまでのような小手先の改革では、社会保障の諸制度は持続できるわけがない。
  • 安倍首相はきのうの経済財政諮問会議の席上、25年までに目指す医療機能別病床数への対応について述べるにとどまった。試算は40年度までに社会保障費が急膨張することを示しているのに、相変わらず25年までの政策しか語らないのは不自然
  • 長期的な社会保障改革をこれ以上遅らせるわけにはいかない。

 

4 日経新聞 「医療・年金の持続性に陰りみえる長期推計」 (5月22日)

  • 経済財政諮問会議に示した社会保障給付費の長期推計は、このままだと医療・介護や年金を持続させられないおそれを映し出した。
  • 医療・介護の給付費が経済成長を上回るペースで増大が続く。
  • 2040年度時点の働き手が無理なく制度を支えられるなら持続性は保たれる。それにはまず給付費の増大を圧縮する改革が不可欠
  • そのうえで、高齢層を中心に自己負担の引き上げも避けては通れない。
  • 介護については、自己負担の引き上げや軽度の介護サービスを保険適用外にする改革が急務である。
  • 医療の伸びの主因は長寿化と技術革新が生み出す高コスト医薬品・治療法の登場だ。民間保険をもっと生かすべきだ。
  • 年金の国内総生産(GDP)比は縮む。高めの物価上昇率を想定し、実質年金額を切り下げるマクロ経済スライドが働くのを前提にした効果が大きいとみられる。
  • これは厚労省に都合のいい前提で若い年金加入者を欺くものだ。支給開始年齢を65歳から70歳へ引き上げるなど改革が必要
  • 歴代政権はこれまで消費税増税より保険料引き上げを優先してきた。こうした取れるところから取る姿勢を改め、消費税率10%後の行程表を示すときだ。
  • 財務、厚労省は19年度からの財政健全化計画について、社会保障費の伸びを抑える目安を当座は定めない。であればなおのこと、給付費の増大を根本から圧縮する改革に着手するのが筋であろう。

 

5 産経新聞 「2040年 持続可能な社会保障築け」 (5月25日)

  • 高齢者がほぼ3人に1人の割合となる40年頃までに、残された時間は25年を切っている。安倍首相は直ちに有識者会議を立ち上げ、取り組んでもらいたい。
  • 高齢者が増える一方で、勤労世代は急速に減っていく。このままでは、税金や保険料の大幅な引き上げが避けられない。
  • 給付の見直しと併せて、財源をどこに求めるかを考えなければならない。消費税率10%以上への引き上げについても、検討を始めるときである。
  • 政府は40年度の医療福祉分野の就業者数も試算している。医療は18年度から19万人増の328万人、介護は171万人増の505万人で、その他の福祉分野を合わせると、1065万人が就業することが必要だと見込んでいる。
  • 少子高齢化で日本全体の就業者数が900万人以上減る見通しになっている。医療福祉分野だけ、政府が見込んでいる就業者数を確保するというのは現実的でない。
  • 外国人労働者の活用拡大を求める声はあるが、他国も介護人材を求めており、限界がある。
  • こうした事情を踏まえれば、高齢者が一定のエリアに集まり住むなど、多面的な政策を組み合わせて対応していくしかない。
  • 国民の「住まい方」を見つめ直し、若い頃から生活習慣の改善に励み健康を維持することも欠かせない。これまでの社会保障政策の枠組みにとらわれない発想が、求められている。

 

 

 

いずれの新聞社も「はやく議論を始めることが必要」という論調です。 

 

来年、参議院選挙がありますが、社会保障をどうするかについて議論されることを期待したいです。