2020年の論点100 読みました。
「2020年の論点100」(文藝春秋)を読みました。
毎年年末に発行されるものでこれまでも紹介しましたが、今年も参考になった論点を紹介します。
1 健康寿命を延ばしても医療費は減らない。超高齢社会に必要な医療とは
康永秀生(東京大学大学院医学系研究科教授)
- 予防医療を推進する施策に「医療費削減」を盛り込んでいるとすれば、それは全くの見当違い。
- 予防医療は医療費がかかるタイミングを先送りしているだけであって、生涯にかかる医療費の総額を削減できない。
- 医療費を削減できる手立てとしては、
①認知症の治療薬。効果があったとしてもほんのわずか。
②風邪の抗菌薬。風邪に抗菌薬は無効。そればかりか安易な抗菌薬の使用は薬剤耐性菌を生み、他の重篤な疾病を招く恐れもある。 - 他にも、効果がはっきりしない薬の処方や治療法について、医療ビックデーターをなどを用いて、科学的根拠(エビデンス)に基づいて既存の治療の有効性を洗い直す必要がある。
(以上、本書より)
筆者は、予防医療を否定しているのではなく、「予防医療で医療費が削減できる」という考えを否定されています。
確かに、筆者の主張を読みますと理解できます。
「予防医療を進め、大きな病気にかかることなく亡くなる。」
医療費の削減には、これが一番有効なのでしょう。
2 「老後2000年問題」には解決策があるのか
平林亮子(公認会計士)
- 老後の問題を「お金」で解決しようとすれば、2000万円では到底足りない。
- ただし、老後の問題は「お金じゃない」というのがもう一つの結輪
- 最低限の生活は公的年金もしくは社会制度でなんとかなる。
- 多くの場合、後期高齢者になれば医療費の自己負担も1割となるし、高額療養費や高額介護サービス費制度などにより、無制限の負担をすることもない。
- 老後に実際に必要となるのは「人手」だ
- お金を持っていること以上に、人に助けてもらえる人物たることがとても重要
- 現役世代が注力すべきは老後の資金集めではなく、社会の中で周囲の人たちと生きていく力を養うことだ。
- 大切なことは、社会に貢献していくこと、周囲とコミュニケーションをとって助け合って生きていくことしかない。
- 仕事やボランティアという形で社会に参加し、周囲の人と共に過ごせるよう自分を磨くしかない。
- 老後のお金の準備をすることばかり気を取られて、目の前にある仕事や人との関係をないがしろにしてしまっては本末転倒
(以上、本書より)
「人間関係を大切に」という意見はよくわかります。
田舎のように、人と人とのつながりが太かったら、老後で何か困っても助け合うことができます。
いわゆる「共助」ですね。