要点はココ! プチ活字中毒者の乱読日記

図書館の本を読み尽くしているプチ活字中毒者です。読むジャンルは偏ってますが、読書する時間のない人に、本の要点を紹介します。

「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」の要点を紹介します。

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか(2017/4 慶應義塾大学出版社株式会社)
を読みました。

 

①人手不足が続いているにもかかわらず、なぜ賃金が上がらないのか。
②賃金を上げることが今後可能とすれば、いかにして実現できるのか。

この問いについて、16組の方々の意見が書かれています。

 

なお、本書は、「2017年 エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」で、1位に輝いた本です。

www.nikkei.com

 

 

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか

 

特に関心を持った意見を紹介します。 

 

<要点>

 

 

1 近藤絢子

医療・福祉の職場では
  • 医療・福祉は、明らかに労働需要が増加しているのになかなか賃金が上昇しない。
  • 一番の理由は、診療報酬制度や介護報酬制度により医療サービスや介護サービスの価格が抑制されているから。
  • 現行の介護保険制度では、利用者が増えたからといって、事業者は勝手に値上げすることはできない。
  • 介護保険の利用者の増加により財政状況が悪化すると、支出を抑制するために、国は介護報酬を低く抑えようとする。
  • 医療についても診療報酬制度のよる価格の固定化や高齢化により保険財政の悪化と診療報酬圧力など、介護と同様の問題がある。
  • 医療、福祉は価格メカニズムが働かない構造になっていることが、「人手不足なのに賃金が上昇しない」ことの重要な要因

(本書より)

 

理解しやすい意見ですね。
医療サービス、介護サービスの価格を自由にすれば、そこで働く方の給料も高くなるかもしれませんが、利用者の負担も増えるかもしれません。

 

その他の職場では
  • 一人あたりの仕事の量だけ増やしてそれに見合う分給与を上げなければ、実質的には賃金を引き下げているのと同じ。
  • 無理な要求やサービス残業が常態化し、その結果離職する社員が増え、補充が追いつかずに「人手が足りない」と感じているケースは意外と多いのではないか。
  • つまり、雇用条件が悪くなっているせいで人手不足が生じている。
  • 人手不足の理由として、「景気回復に伴う事業の拡大」よりも「離職の増加」を答えた企業が多い。
  • 人手不足を緩和する対策として、44%の企業が「業務の効率化を進める」と回答
  • 短い時間で多くの仕事をこなすよう従業員に圧力をかけることになっていないか。

(本書より)

 

 

 

仕事量の増加→給与があげられない、サービス残業が常態化など雇用条件が悪化→離職する社員が増える→人員の補充が追い付かない→雇用条件が悪化・・・。

というような悪循環になっているのが人手不足「感」の実態ではないかということです。

 

「経済学的に見れば、必要な人員を確保するために賃金を上げることのできない企業は早晩淘汰される存在」と厳しいことが述べられています。

 既に「人手不足倒産」が生じていますが、今後ますます増えていくでしょうね。

 

「業務の効率化」について、具体策がないにも関わらず「効率化」を求めると、サービス残業や持ち帰り残業が増えたりして、結局、従業員に対し、過度な負担を求めることになりかねません。
44%の企業が「効率化」を進めると回答していることに、少し危惧を感じます。

 

下げられないから上げられない
  • 業績が好調で順調に利益も上がっているにもかかわらず、なかなか賃金を上げようとしない傾向が一部企業で見られることも事実
  • 理由として、一度賃金を上げると将来下げることが難しいという問題が考えられる。
  • 1,000円の引き上げと2,000円の引き上げ差よりも、1,000の引き下げと据え置きの差のほうが、従業員のやる気を損ねるという研究結果もある。
  • 実際、リーマンショック後の2009年でさえ、賃金引き下げに踏み切った企業は6.4%にすぎない。

(本書より)

 


わかりやすい意見ですね。

「賃金の上げ下げが企業業績にどう影響するのか」という研究がないでしょうか。
ドラスティックに賃金を上げ下げしたほうが業績がいいという研究結果があれば、この考えは変わるかもしれません。

 

その他の方の意見も紹介していきたいと思います。