要点はココ! プチ活字中毒者の乱読日記

図書館の本を読み尽くしているプチ活字中毒者です。読むジャンルは偏ってますが、読書する時間のない人に、本の要点を紹介します。

裁量労働制について社説を読んで考えてみました。(その2)

裁量労働制の対象拡大については、働き方改革法案から削除されることとなりましたが、それについて、各新聞社の社説の要点をまとめてみました。

 

 

「働く人」の画像検索結果

 

 裁量労働制については、国会で対象の拡大を議論している際の各社の社説の要点をまとめて考えたことを以前に書いています。

 

minemineta15.hatenablog.com

 

 

働き方改革 「高プロ」制度も削除を 朝日新聞(3月2日)

  •  高度プロフェッショナル制度も法案から削除して出直すべきだ。働き過ぎに歯止めをかける規制の強化こそ急がねばならない。
  • 残業代の支払い義務を免れると、長時間労働が横行するのではないか。その懸念と不安に政府が答えられていないことが問題の根本だ。
  • 高プロは、専門職で高年収の人を規制の外に置く。深夜・休日の割増賃金もなく、裁量労働以上に長時間労働につながる懸念は大きい。
  • 働く時間を自由に決められると、首相は今も利点を強調する。だが、多くの職場では仕事の量を自分で決められないのが実態だ。
  • 裁量労働では仕事の時間配分を具体的に指示してはいけないが、守られていない例が少なくない。高プロには指示を禁じる規定すらない。

 

裁量労働制断念 冷静に審議できる環境整えよ 

読売新聞(3月2日)

  • 裁量労働制は、多様化する仕事の実態を踏まえ、効率的な働き方を促すものだ。みなし労働時間は業務量を勘案し、労使で決める。
  • 野党の「長時間労働を助長する」との批判は一面的過ぎる。
  • 労働力人口が減少する中、働きやすい環境を整え、生産性向上につなげることが重要。政府は、客観的かつ正確な資料を用意し、冷静な議論に資することが必要だ。
  • 野党は、脱時間給制度についても「過労死を誘発する大改悪」などと批判している。不安をいたずらにあおるような決めつけは不毛だ。具体的な対案を提示し、建設的な論戦を挑んでもらいたい。

 

裁量労働拡大を今国会断念 元々「一括」が無理だった

毎日新聞(3月2日)

  • まず必要なのは、なぜずさんな調査となったかの検証だ。
  • 厚労省が言うように単なるミスだったのか。「裁量労働制長時間労働につながらない」という結論を導き出す意図が最初からあったのか。公正さという政治の根幹に関わる疑問は消えていない。
  • 経営者側が求める規制緩和と、労働者側の視点に立った残業規制を抱き合わせて一括法案にすること自体に無理がある。今回はその矛盾が表れただけである。
  • 一括法案に野党が反対すれば「野党は残業規制にも反対した」とアピールできる。そんな狙いもあるはずだ。やはり、一つ一つ法案を切り離し国会で丁寧に検討すべきだ。
  • 国会はこの1カ月、データ問題に集中した。もっと早く決断していれば、北朝鮮問題など他の課題にも審議時間を割けたはずだ。その責任も大きい。

 

裁量労働拡大をいつまで先送りするのか 日経新聞(3月2日)

  • 仕事の進め方や時間配分を働き手自身が決められる裁量労働制の対象業務の拡大は、できるだけ早く実現すべき。
  • 対象業務の拡大を先送りすればするほど、働き方改革の眼目である労働生産性の向上は進みにくくなる。
  • 柔軟に働ける制度の意義を政府は認識し直してほしい。
  • 時代の変化に合わせた労働法制のあり方をどう考えるか、という本質的な議論にこそ力を入れるべきではないか。
  • 時間をかけて働くほど賃金が増える現在の制度には、働き手自身の生産性向上への意識が高まりにくいという問題がある。
  • グローバル競争がさらに激しくなり、人工知能(AI)が普及すれば、生産性の低いホワイトカラーは失職する恐れもあるだろう。
  • 社会のこうした変化に備える改革が、裁量労働拡大であり、成果をもとに賃金を払う「脱時間給」制度の創設である。
  • そもそも裁量労働制は、働く時間の短縮を目的とした制度ではない。

 

「裁量制」切り離し 必要性示す議論立て直せ 産経新聞 (3月2日)

  • 残業時間の上限設定などの規制強化と裁量労働拡大などの規制緩和について、政府は表裏一体のものだと双方の必要性を主張してきた。
  • 一部を切り離す以上、議論を立て直さねばならない。
  • 裁量制は専門性の高い業務で働く人が、自由に勤務時間を決められる仕組みである。生産性の向上に資する制度といえる。
  • 経営側が働く人の労働条件を一方的に切り下げることのないよう、明確な歯止めを設ける措置などは必要

 

 

 

各新聞社の社説の要点を見比べますと、朝日新聞日経新聞の主張が反対、賛成の両端の意見ですね。

 

朝日新聞は「働き過ぎに歯止めかける規制がまず第一」、日経新聞は「労働生産性の向上ため、できるだけ早く対象業務の拡大を実現するべき」と。

 

 

「どちらか」ということではないと思いますが、朝日新聞の主張に同意する人が多いと思います。

 

「そもそも裁量労働制は、働く時間の短縮を目的とした制度ではない」と日経新聞は書いています。

事実はそのとおりかもしれませんが、裁量労働制が違法適用されていた野村不動産の社員が過労自殺するなど、裁量労働制は労働者にマイナスしかない印象を受けます。

 

これから就職しようとする学生にとっても、裁量労働制を導入している企業に対しては、「どれだけ働かせられるかわからない・・・」という不安感が募り、就職希望先として避けてしまうのではないでしょうか。

 

裁量労働制の最大の問題点は、よく言われることですが、仕事量がみなし労働時間と釣り合ったものがどうか。ということだと思います。

 

裁量労働制は、実態として、「仕事量>みなし労働時間」となっているのではという懸念を持っている労働者が多いのではと思います。

 

読売新聞の社説で書かれているとおり、政府は、このあたりの懸念に答えられる客観的かつ正確な資料を用意するとともに、野党も働き方改革として具体的な対案を提示する。こういう状況になって始めて裁量労働制の是非が議論出来ると思います。