こんな選挙制度、投票制度はどう思いますか?
「シルバー民主主義の政治経済学」を読みました。
民意の高齢化を反転させる投票制度改革について、3案ほど書いてありましたので、要点を紹介します。
①ドメイン投票制度
- 有権者年齢に満たない子供の数に応じて親に子供の投票権を行使させる制度
- 投票権を実際に行使するのは子供ではなく親
- 親は自らの子育て環境や子供の将来を改善してくれる政党なり候補者も投票することが期待されている。
- 親が子供の嗜好を正しく認識し投票する蓋然性は不明
②世代別選挙区制度
- 有権者の年齢構成に応じた一定の世代代表を議会へ送ることを目的とした制度
- 18歳から30歳代の有権者を母集団とする選挙区を青年区、40から50歳代を壮年区、60歳代以上を老年区とし、三つの世代別に区分した選挙区とする。(具体的な例示が本書で書かれているので、参照いたただければと思います)
- このやり方に従うと、有権者人口の年齢構成と各々の代表構成が投票率にかかわらず対応
- 特に、棄権しがちな若い世代の利害を代表する政治家を必ず選出することができる。
- 各世代別選挙区の選挙区の地域範囲は年齢ごとに異なることになるし。区割りは年齢構成の変化とともに変わっていくため固定されない。
- その結果、「地元」という概念自体が崩れてしまい、地益誘導型の地元優先の政治活動の弊害や。世襲政治家を生み出す要因ともなっていた選挙地盤の固定化が是正される。
③平均余命投票制度
- 一定年齢以下の有権者に平均余命と現在の年齢との差に応じた票数を与える制度
- 例えば、現在18歳の男性の平均余命は63.09歳なので63票を与え、23.51歳の平均余命を持つ60歳の男性には24票を与える。
- あるいは平均余命の長さの違いでウエイト付けする(18歳の票は60歳の票の2.7倍の重みを与える)ことも考えられる。
以上が本書で紹介されている投票制度です。
それぞれについて、思うことを書きますと
①については、期待どおりの投票が行われるかどうか疑問ですね。
必ずしも子供のことを思って投票するとは限らないですし。
ただし、子育て中の方の意見を重視することになるのはいいですね。
②について、投票率に関係なく各世代の代表者が選出されるという点が大きな特徴ですが、投票率が低くても、決まった数の代表者を選出する必要があるのか?という疑問があります。
ただ、地元優先の政治活動の弊害や選挙基盤の固定化が是正される効果は魅力的ですね。
③について、一番しっくりくる案です。
余命が長いということは、その分、政策の影響を受ける期間が長いということであり、若い人ほどウエイトを重くするのは合理的な考えだと思います。
「若者と高齢者で一票の重さが違うことは問題」という意見があるかもしれませんが、一生と通じて見ると人によって違いはなくなるのではないかと思います。
(調整等必要かもしれませんが)
選挙制度を変えることはかなり困難なことだと思いますが、このような案が言われているということは、シルバー民主主義となっている状況に対して懸念が示されていることだと思います。
政治家の中にこのような投票制度の改革案を提起する方がいるでしょうか。