無子高齢化 出生数ゼロの恐怖を読んで
「無子高齢化(出生数ゼロの恐怖)前田正子 著」を読みました。
「少子高齢化」というフレーズは一般的ですが、さらに進んで「無子」としている点に著者の強い危機感を感じます。
- 作者: 前田正子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2018/11/28
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書の中で、少子化の原因の一番のポイントとなる世代として、「団塊ジュニア(1971年から75年生まれの者)」に焦点をあてています。
第2次ベビーブームであるこの世代が結婚・出産すれば、第3次ベビーブームが到来し、少子化は改善されるという見込みがあったが、結果的に第3次ベビーブームは来なかった。といことは、本書に限らず、数多くの書籍でも指摘されているところです。
当然ながら、著者はこのような雇用状況とした、国や経済界を痛烈に批判しています。
では、どうすればいいのか。本書で言われている対応策は
①貧困対策を行う。適切な職業訓練や生活支援で一人ひとりの職業能力を高めるとと
もに、最低賃金の引上げなど、フルタイムで働けば自立して働けるだけの所得を補
償する。
都市部では、アルバイトでも時給が高くなっており、フルタイムで働けば自立できるぐらいの収入は得られるのでは。ただ、一方で、家賃などの生活費は高いのかもしれません。
地方は逆の構図かもしれませんが、いずれにしても、人手不足がますます深刻化する状況なので、給与・賃金は高くなる方向に進んでいくのではないでしょうか。
「必要なコストは支払うということは消費者にも納税者にも求められる。」という意見は、十分な給与・賃金を支払うためにも納得できる意見だと思います。
②氷河期世代や「ひきこもり」といわれる人たちの状況をきめ細かく把握し、何らか
のかたちで社会に参加してもらう
人手不足の解消として、氷河期世代やひきこもりの人たちを働いていただこうというもの。外国人の受け入れは必要ないと著者は述べています。
氷河期世代の方ももはや出産適年齢を過ぎつつあるので、「少子化対策」としては効果については疑問を感じますが。
③妊娠期から青年期の職業的自立まで含め、人生前半、つまり若い世代への支援を充
実させる。
妊産婦の死因の第一位が自殺であり、全体の3割を占めるという結果があります。(国立成育医療研究センター 2018年)
この状況を解決するために、著者は、「包括的な子ども・若者支援策を形成することが必要」と述べられています。
具体的には、子ども施策を担当する新しい省(子ども若者省)の設置を提唱されています。
現在も少子化担当の大臣はいますが兼務であり、また、子供に関する施策も、内閣府・厚生労働省・文部科学省と別れていて、「縦割り」となっています。
少子化対策が国家的課題と言うなら、省もしくは庁の設置は必要なことだと思います。
④社会保障制度全体の整合性を図る。
「どういった社会にするのかを明確にし、社会保障制度全体を再設計する必要がある。」
著者は、介護離職の例えをあげて述べていますが、ますます進む少子高齢化を踏まえ、社会保障制度の再設計は避けて通れない課題です。
⑤施策に優先順位を付け、あきらめることも選択肢としながら、増える負担をどう分
け合うか、という痛みを伴う議論に向き合う。
「負担のわかちあいあいが必要」「少子高齢化の波を乗り切るためには、私たち一人ひとりの覚悟と力が必要」と述べています。
そのとおりだと思いますし、このような意見を言われる人は多いですが、政治の場では議論が進まないですね。
逃げずに、この問題に向き合う政治家があらわれることを期待したいです。
本書は少子化問題だけでなく社会保障全体についても言及されており、読みやすい本でした。
なぜ、「少子化になったのか」という点について詳しく述べられており、その点から知りたいと思う方には最適な本だと思います。