農山村からの地方創生。特に、学校の統廃合問題について
「農山村からの地方創生」(小田切 徳美、尾原 浩子 著)を読みました。
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人口減少、過疎化に悩む農山村での様々な取り組みが紹介されているとともに、国の施策について、著者の意見が述べられています。
著者の2名は
小田切 徳美:明治大学農学部教授
尾原 浩子:日本農業新聞農政部記者、鳥取大学地域学部非常勤講師
で、2人とも日々農山村の地域と人々を訪ね、小さな声を拾い上げる「歩き屋」と述べられています。
確かに、本書では各地の取り組みが細かくに紹介されています。
地域運営組織の典型事例である島根県雲南市。あば村運営協議会を設立している岡山県津山市阿波地区。集落活動センターみやの里を設立している高知県四万十市旧土佐村の大宮地区などなど。
地域の維持・発展のため、それぞれの地域が創意工夫しながら取り組みを進めていることがよくわかります。
このような取り組みが功を奏してか、全国各地で、都会からの移住、定住の動きが目に見える形で活発化していて、しかも、20代から30代の若者が農山村に向かう主役となっているとのことです。
過疎指定の797市町村の2010年と2015年を比べた人口動態と人口予測では、実質社会増を実現した市町村は11.7%に上がったという調査があります。
一方で、総務省が1月31日に発表した「住民基本台帳人口移動報告」によると、平成30年の転入超過となった都道府県は、東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県、愛知県、福岡県、大阪府及び滋賀県の8都府県となっており、相変わらず、都市部の人口が増えているという結果でした。
しかも、転入超過数が最も拡大しているのは東京都です。
まだまだ、「都市部⇒農山村」は大きな流れにはなっていないようです。
地方創生に逆行する学校統合
本書で特に考えさせられたのは、農山村における学校統廃合の問題です。
少子化・過疎化に伴い、学校の統廃合が進んでいます。
〇公立小学校
学校数:平成元年(24,608校)⇒平成28年(20,011校)
〇公立中学校
学校数:平成元年(10,578校)⇒平成28年(9,555校)
〇公立高等学校
学校数:平成元年(5,523校)⇒平成28年(5,029校)
※平成28年度学校基本調査より
子どもの数が減るのだから学校の統廃合はやむをえないと思っていましたが、著者は反対の立場です。
その理由について様々なことが述べられていますが、一番の理由と思ったのは、「学校が地域からなくなれば、過疎高齢化、地域の高齢化につながる。」ということです。
「子どもの減少⇒学校統廃合⇒子育て世代の転出⇒子どもの減少・・・」
と負のスパイラルに陥ってしまいます。
一方で、著者は反対の立場ですが「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引き」で言われている、小規模校の問題点も無視できないと思います。
公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引の策定について(通知)(平成27年1月):文部科学省
本書では、香川県高松市の離島、男木島の取り組みが紹介されています。
全ての地域が男木島のような取り組みが出来るとは思いません。「統廃合しなかったために問題が生じた。」という事例もあると思います。
いろいろな事例を今後紹介したいと思います。