金融庁の報告(高齢社会における資産形成・管理)を読んで思ったこと。
金融庁が公表した、「金融審議会・市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」」が大きな話題となっています。
安部総理は、国会で「不正確であり、誤解を与えるものだった」と釈明。
麻生大臣は、報告書を受け取らない。(⇒事実上の撤回)
野党は、このような与党の対応を批判
と連日ニュースになっています。
ということで、私もこの報告書を読みました。
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
読んだ率直な感想は、
「ここまで批判される内容なの??。」
「リアルな現実が書かれているだけ。」
と思いました。
内容に少し触れますと、
高齢夫婦は毎月5.5万円の赤字
ということです。
すべてはここから始まっています。
ちなみに、ここでの高齢夫婦とは、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯です。
実収入約21万円に対し、実支出約26万円がとなっていて、そうすると、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取り崩しが必要になるという内容です。
この赤字部分をどうするか、ということに対して報告書では、資産形成の手段として、
- つみたてNISA
- iDeCo
をあげています。
ということが大まかな要点は以上のとおりですが、批判している人の意見としては
- 年金を払っているのに、今さら自分でなんとかしろと言うのか!
- 年金は「100年安心」と言っていたじゃないか。
- 2,000万円も貯められない。
というものです。
そもそも年金は現役世代の収入に対し6割ぐらいの金額なので、当然、現役の時と同じレベルの生活をするためには、
- 年金のほかに自分で収入を得る。
- 貯蓄を切り崩す。
- 年金にあわせて生活レベルを下げる。
となります。
いずれにしても、自分でなんとかしないといけません。
しかも、これからますます少子高齢化となり、年金額が下がることが予想されます。
「国がなんとかしてくれる。」と悠長に構えていたら厳しい老後が待っているでしょう。
そのことは既にいろいろな方が指摘しています。
「100年安心」も野党は批判していますが、年金制度が崩壊しないということであって、「年金だけで100年暮らせる。」ということではないと思います。
マクロ経済スライドが導入の議論ではっきりしていると思いますが。
2000万円も貯められない。という批判は確かに納得できます。
2000万円といえばかなり大きな金額ですから。
でも、現実を直視する必要があります。
今回、2000万円という金額が大きく取り上げられて批判となりました。
でも、この報告書をいろいろ批判しても、まったく意味のないことだと思います。
与党は「いたずらに不安を煽っている。」と報告書を批判し、報告書をなかったものしていますが、現実逃避で無責任な対応としか思えません。
野党も、当然、公的年金は老後資金の全てを賄う設計とはなっていないことは承知しているはずなのに、「100年安心は嘘だったのか」ということを今さら言っても意味のない指摘だと思います。
今後ますます進行する少子高齢化社会を踏まえ、年金をどうするのか。
月5.5万円以上の赤字の人がもっと増えると思いますが、国としてどこまで手当できるのか(または、できないのか)という根本的なことを議論していただきたいです。
今回のこの報告書は大変意義のあるものだと思っています。
もっと年金に対して議論が進むことを期待します。