2020年 元旦の社説を読み比べました。(その1)
2020年(令和2年)が幕開けしました。
新聞各社は、元日の社説で何を述べているでしょうか。
読み比べてみました。
2020年代の世界 「人類普遍」を手放さずに(朝日新聞)
【概要】
- 「普遍」とは、時空を超えてあまねく当てはまることをいう。これを手がかりに新たな時代の世界を考えてみたい。
- 国連の「持続可能な開発目標」(SDGs〈エスディージーズ〉)は、貧困や飢餓をなくす、女性差別を撤廃するなどの、17の「普遍的な」目標を掲げている。
- 「誰も置き去りにしない」という精神が、目標の普遍性を端的にあらわす。
- 目標にどこまで迫ることができるか。それが20年代の世界を見る一つの視点になる。
- だが、21世紀も進み、流れがせき止められつつあるかに見える。「普遍離れ」とでもいうべき危うい傾向が、あちこちで観察される。
- 自由と民主主義が押し込まれている。
- プーチン氏は強権的なナショナリズムを推し進め、米国のトランプ大統領も移民を敵視し、自国第一にこだわる。
- 日本はどうか。国会での論戦を徹底して避け、権力分立の原理をないがしろにする。メディア批判を重ね、報道の自由や表現の自由を威圧する。批判者や少数者に対する差別的、攻撃的な扱いをためらわない。
- 「普遍離れ」という点で、世界の憂うべき潮流と軌を一にしていることはまぎれもない。
- 近代社会を、そして戦後の世界を駆動してきた数々の理念。それを擁護し、ままならない現実を変えていくテコとして使い続けるのか。その値打ちと効き目を忘れ、うかつにも手放してしまうのか。予断を許さない綱引きが20年代を通じ、繰り広げられるだろう。
(以上、朝日新聞より)
平和と繁栄をどう引き継ぐか・・・「変革」に挑む気概を失うまい(読売新聞)
【概要】
- 新たな時代へと始動するにあたり、起点とすべきは、多くの国々がうらやむ日本の総合的、相対的な「豊かさ」を正当に評価し、これまでの発展と政治や社会の対応力に自信を持つことである。
- 「危機」ばかりが叫ばれ、不安や悲観が蔓延すれば、社会は活力を失う。自信は国民に安心をもたらし、変革に挑む勇気を生むだろう。
- 経済を成長させるための「変革」と、社会や民生の「安定」とを両立させる取り組みが、重要な課題となろう。
- 高速・大容量で、遅れや途切れがほとんどなく、多くの機器を同時に接続できる次世代の通信規格「5G」の商用サービスが、日本でも今年始まる。
- 変革は、情報通信業や金融業の領域を超え、すべての産業へ広がる。
- デジタル化し、AIやロボットが制御する省力化経済の社会では、新領域で知識やデータを握った勝者に利益が集中しがちだ。
- 景気や物価の変動、所得分布や雇用の変化など、経済への正と負の影響を検証する必要がある。
- 政府は、デジタル化時代の人材育成を急ぎ、労働者の再教育や再就職の支援も強化すべき。
- 企業も雇用の促進に配慮し、利益を報酬や配当、投資など様々な形で社会に公正に分配する姿勢が求められる。
- 日本は急速な人口減少と高齢化が進む。老若男女問わず、働く意欲のある人ができるだけ長く働ける社会は、活力の礎となろう。官民挙げて創出すべきだ。
- 経済や社会を支える働き手が増えれば、介護が必要な一人暮らしの高齢者といった真に困窮する人を支援する力も増す。老後や生活への不安を和らげていきたい。
- 多くの人に「働く機会」を保障する政策をもっと重視すべきだ。子育てと仕事の両立、就職難に見舞われた世代の再挑戦、高齢者の就労などを、きめ細かく支援しなくてはならない。
- 企業も意識改革を迫られる。自宅など場所や時間にとらわれずに働くテレワークの導入、再就職や企業の人材補強を容易にする中途採用の拡充、高齢者に適した仕事の創出を進め、人事・賃金制度も柔軟に見直してもらいたい。
- 国の財政は厳しい。その一方で、民間企業には460兆円の内部留保がある。このうち現・預金が220兆円、5年間で50兆円も増えた。余剰資金を成長への投資に振り向けたい。
- さらに、家計が保有する現・預金は986兆円。株式などを含む金融資産全体では1864兆円ある。この「眠れる資金」を掘り起こして政策に活用できないか。重要な検討課題だ。社会保障や福祉、少子化対策に役立てたい。
(以上、読売新聞より)
元日の社説は、各社ともボリュームが多いので、まずは、朝日新聞と読売新聞の社説を紹介します。
朝日新聞は「普遍」という表現を用いて、アメリカ、ロシアをはじめとする世界各国、そして日本で進んでいる、自国第一主義、少数者に対する攻撃、さらには、自分と意見を異にする者を認めない姿勢。このような「普遍離れ」について危惧を示す内容となっています。
「なぜ、普遍離れが進んでいるのか」「その背景は何なのか」「そして、普遍離れの進行を食い止める方法は」。このような点について、記述がないので、少しもの足りない内容ですね。
読売新聞は盛りだくさんの内容ですが、朝日新聞と異なり、身近な社会保障や雇用について述べられおり、なおかつ、財源についても具体的に述べられているので分かりやすく説得力もありました。
また、日本の「総合的、相対的な「豊かさ」を正当に評価」と、プラスのことも述べている点は、バランスがとれていると思います。
この2紙を比較すると、読売新聞の社説のほうがよかったですね。